
2026年4月25日から7月26日まで東京都現代美術館で開催している『エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし』を観てきましたのでご紹介します!
副題の英語タイトルは「Eric Carle: Art, Books, and the Caterpillar」。
絵本のむこうに、なにがみえる?というキャッチコピーとともに、絵本作家としてのエリック・カールではなく、アーティストとしてのエリック・カールの仕事を丁寧に掘り下げた、見応えのある展覧会です。

『はらぺこあおむし』57年の旅

エリック・カール(Eric Carle、1929年6月25日 – 2021年5月23日)は、ドイツからの移民の両親のもと、アメリカ・ニューヨーク州シラキュースに生まれました。
6歳で一家とともにドイツへ渡り、シュトゥットガルトで少年時代を過ごします。
12歳のとき、美術教師クラウス先生との出会いが彼の人生を変えました。当時退廃芸術として禁じられていた表現主義や抽象絵画の複製を見せてもらい、大きな衝撃を受けたといいます。
その後シュトゥットガルト州立芸術アカデミーで商業美術を学び、卒業後はアメリカへ渡ってグラフィックデザイナーとして活躍。
1969年、絵本編集者アン・ベネデュースとの出会いから生まれた『はらぺこあおむし』(The Very Hungry Caterpillar)は、世界70言語以上に翻訳され、累計発行部数5,000万部を超える世界的なロングセラーとなりました。
今展覧会では、絵本の原画をはじめ、グラフィックデザイナー時代の仕事、晩年まで描き続けた作品など170点以上が一堂に集まっています。

色を塗り、切り、貼る – コラージュという魔法

エリック・カールの作品の最大の特徴は、独自のコラージュ技法です。
アクリル絵具で色を塗り重ねたペーパーを、ハサミや手でちぎって貼り合わせることで、独特の色彩と質感を生み出します。
遠くから見ると鮮やかな色面として、近くで見るとさまざまな絵具の筆触や紙の重なりが見えてくる——その二重の豊かさが、作品に宿っています。

日本へ届けたメッセージ
展覧会で特に印象的だったのが、日本とのつながりを示す作品群です。

「箸をもったあおむし」(Caterpillar with Chopsticks)は、あおむしが箸で魚をつまみ、傍らには「酒」と書かれた一升瓶が置かれた、ユーモラスな一枚。
日本での展覧会のために制作されたイラストレーションで、カールの遊び心とともに、日本の食文化へ親しみが伝わってきます。

「がんばって」(GANBATTE)は、2011年の東日本大地震で被災した子どもたちを支援するためのチャリティオークション用に制作された作品です。

星空と月の部屋
展示の一角に、深い青の世界が広がる部屋がありました。

壁一面に広がる夜の青、そこに浮かぶ満月と金色の星たち。エ
リック・カールの作品世界から着想を得たインスタレーションで、絵本の中に入り込んだような感覚になるフォトスポットです。
カールの絵本には夜や月が登場する作品が多く、なかでも『パパ、お月さまとって!』は名作として知られています。
この部屋は、そんな彼の夜の世界を体感させてくれる空間でした。
絵本のむこうに広がるアートの世界
展示では「絵本作家・エリック・カール」のアート作品についても伝えています。


日本の百貨店向けにカタログのデザインの作品があったことを知りました。
ショップも充実

展示を出たあとのショップには、「はらぺこあおむし」はもちろん、エリック・カールの絵本が並んでいました。

図録も充実していて、作品の細部まで丁寧に紹介されていて、展覧会を振り返ることができます。
本が180°に開く装丁がいいな、と思いました。


エリック・カールは絵本を描いていたのではなく、子どもたちにアートを届けていたのだと感じました。
エリックカール年表
| 年 | 年齢 | 出来事 |
|---|---|---|
| 1929 | 0歳 | 6月25日、ドイツからの移民の両親のもと、アメリカ・ニューヨーク州シラキュースに生まれる。父はタイプライターの販売会社に勤めていた。 |
| 1935 | 6歳 | 一家でドイツへ戻り、母方の祖父母とともに暮らす。 |
| 1936 | 7歳 | シュトゥットガルトで小学校に通いはじめる。アメリカの学校とは大きく異なり、「狭い教室、小さな窓、硬い鉛筆、小さな紙、そして間違いをゆるさない厳しい指導」が強く印象に残った。 |
| 1941 | 12歳 | 美術教師クラウス先生の自宅で、当時退廃芸術として禁じられていた表現主義・抽象絵画の複製を見せてもらい、衝撃を受ける。クラウス先生はいつもエリックの才能を励ましてくれた。 |
| 1946 | 17歳 | クラウス先生の勧めにより、シュトゥットガルト州立芸術アカデミーに入学。エルンスト・シュナイドラー教授のもとで商業美術を学ぶ。 |
| 1950 | 21歳 | アカデミー在学中から、西ドイツのアメリカ文化情報局の文化情報センターでポスターデザインの仕事をする。卒業後はファッション誌の販売促進部のアートディレクターとして働く。 |
| 1952 | 23歳 | 単身ニューヨークへ戻る。雑誌「フォーチュン」のアートディレクターを務めていたレオ・レオーニの作品に心酔し、レオーニの紹介でニューヨーク・タイムズのグラフィックデザイナーの職を得る。その後アメリカ陸軍に徴兵され、ドイツ語が話せることからシュトゥットガルトに拠点をおく部隊に配属される。 |
| 1954 | 25歳 | ドイツ駐留期間に出会ったドロテア・ヴォーレンベルクと結婚。退役しニューヨークに戻り、再びニューヨーク・タイムズで働きはじめる。後に娘サースティンと息子ロルフをもうける。 |
| 1956 | 27歳 | 医薬品広告を専門とする広告代理店のアートディレクターになる。その仕事のかたわら、書籍の表紙デザインなども手がける。1963年頃からはフリーランスのデザイナー・イラストレーターとして、子ども向け教育用図書の挿絵なども担当する。 |
| 1965 | 36歳 | アメリカ各州の料理についての本(Regional Foods and Festivals)に挿絵を寄せる。これが生涯パートナーシップを組む絵本編集者アン・ベネデュースとの最初の仕事となった。 |
| 1967 | 38歳 | 「えっへん、ぼくのおとうさん!」を出版。アン・ベネデュースの求めに応じてストーリーを作り、絵をつけた最初の絵本となった。 |
| 1968 | 39歳 | 「1・2・3 どうぶつえんへ(1,2,3 to the Zoo)」を出版。日本でも1970年に日本語版が出版される。 |
| 1969 | 40歳 | 「はらぺこあおむし(The Very Hungry Caterpillar)」を出版。もともとは「本の虫(book worm)」というアイデアから発展した作品で、本に開いた穴が特徴的な斬新な絵本。70以上の言語に翻訳され、世界的なロングセラーとなる。 |
| 1973 | 44歳 | アメリカ各地での展覧会参加など、絵本作家・アーティストとしての評価が高まる。ニューヨーク・タイムズの最優秀絵本にも選ばれる。 |
| 1976 | 47歳 | 日本での活動が本格化。日本語版絵本の普及とともに、日本の読者との交流が深まる。 |
| 1985 | 56歳 | 日本で「エリック・カールの絵本」(画集)が出版される。日本でのカール作品への関心がさらに高まる。 |
| 1993 | 64歳 | 「Eric Carle, Picture Writer」を制作。自身のコラージュ技法をイラストレーターたちに紹介するビデオ作品。 |
| 2000 | 71歳 | NHKドキュメンタリー「天才の肖像」に出演。晩年も旺盛な制作活動を続ける。 |
| 2001 | 72歳 | エリック・カール絵本美術館(The Eric Carle Museum of Picture Book Art)の建設を発表。マサチューセッツ州アマーストへの設立を予定。東京をはじめとする5都市で大規模回顧展が開催される。 |
| 2002 | 73歳 | エリック・カール絵本美術館が開館。日本各地での回顧展は延べ23万5000人を動員する。 |
| 2003 | 74歳 | 「はらぺこあおむし」の世界累計発行部数が大きな節目を迎える。アメリカ国内でも最も売れ続ける絵本のひとつとして高い評価を受ける。 |
| 2016 | 87歳 | エリック・カール美術館にて展覧会「アート・アート(Art Art)」を開催。晩年まで精力的な展示活動を続ける。 |
| 2020 | 91歳 | 最後の展覧会を開始。画集を出版する。 |
| 2021 | 92歳 | 5月23日、ニューヨーク州にて92歳で没する。 |
エリック・カールの作品リスト
| 年 | 英語タイトル | 日本語タイトル | 著者・役割 |
|---|---|---|---|
| 1963 | The Sun is a Star | — | 画: エリック・カール(Sune Engelbrektson 著) |
| 1963 | Gravity at Work and Play | — | 画: エリック・カール(Sune Engelbrektson 著) |
| 1964 | When I’m BIG | — | 画: エリック・カール(Howard Fair 著) |
| 1964 | If You Can Count to 10… | — | 画: エリック・カール(Howard Fair 著) |
| 1965 | Aesop’s Fables for Modern Readers | — | エリック・カール |
| 1966 | Indoor and Outdoor | — | 画: エリック・カール(Stomm Sinclair Baker 著) |
| 1966 | Grow-It Book | — | 画: エリック・カール(Stomm Sinclair Baker 著) |
| 1967 | Brown Bear, Brown Bear, What Do You See? | くまさん くまさん なにみてるの? | 画: エリック・カール(Bill Martin Jr. 著) |
| 1967 | The Say-With-Me ABC Book | — | 画: エリック・カール(Stomm Sinclair Baker 著) |
| 1968 | 1,2,3 to the Zoo | 1・2・3 どうぶつえんへ | 著・画: エリック・カール |
| 1968 | The Whale with a Jail | — | 画: エリック・カール(Nora Roberts Winner 著) |
| 1969 | The Very Hungry Caterpillar | はらぺこあおむし | 著・画: エリック・カール |
| 1970 | The Tiny Seed | ちいさいこな | 著・画: エリック・カール |
| 1970 | Pancakes, Pancakes! | パンケーキってとっても好きだな! | 著・画: エリック・カール |
| 1970 | Tales of the Nimipoo from the Land of the Nez Perce Indians | — | 画: エリック・カール(Eleanor B. Hardy 著) |
| 1970 | The Roastful Fisherman | — | 画: エリック・カール(Bill Martin Jr. 著) |
| 1970 | A Ghost Story | — | 画: エリック・カール |
| 1971 | Feathered Ones and Furry | — | 画: エリック・カール(Aileen Fisher 著) |
| 1971 | The Scarecrow Clock | — | 画: エリック・カール(George Mendoza 著) |
| 1971 | Do You Want to Be My Friend? | ねえ、あそぼうよ! | 著・画: エリック・カール |
| 1972 | Rooster’s Off to See the World | みんないっちゃう! | 著・画: エリック・カール |
| 1972 | The Secret Birthday Message | みんないっしょに、さがしてみよう! | 著・画: エリック・カール |
| 1972 | The Very Long Tail | — | 著・画: エリック・カール |
| 1972 | The Very Long Train | — | 著・画: エリック・カール |
| 1972 | Walter the Baker | パンやのヴァルター | 著・画: エリック・カール |
| 1973 | Do Bears Have Mothers, Too? | — | 画: エリック・カール(Aileen Fisher 著) |
| 1973 | Have You Seen My Cat? | ぼくのねこみなかった? | 著・画: エリック・カール |
| 1973 | I See a Song | うたがみえる | 著・画: エリック・カール |
| 1974 | My Very First Book of Colors | — | 著・画: エリック・カール |
| 1974 | My Very First Book of Numbers | — | 著・画: エリック・カール |
| 1974 | My Very First Book of Shapes | — | 著・画: エリック・カール |
| 1974 | My Very First Book of Words | — | 著・画: エリック・カール |
| 1974 | Why Noah Chose the Dove | — | 画: エリック・カール(Ilse Aichinger 著) |
| 1974 | All About Arthur (An Absolutely Absurd Ape) | — | 著・画: エリック・カール |
| 1975 | The Hole in the Dike | — | 画: エリック・カール(Norma Green 著) |
| 1975 | Small Circus | — | 画: エリック・カール(Lee Bennett Hopkins 著) |
| 1975 | The Mixed-Up Chameleon | カメレオンのぐるぐる | 著・画: エリック・カール |
| 1976 | Eric Carle’s Storybook: Seven Tales by the Brothers Grimm | — | エリック・カール |
| 1977 | The Grouchy Ladybug | こきげんなすてきなてんとうむし | 著・画: エリック・カール |
| 1978 | Watch Out! A Giant! | 巨人にきをつけろ! | 著・画: エリック・カール |
| 1978 | Seven Stories by Hans Christian Andersen | — | 画: エリック・カール |
| 1980 | Twelve Tales from Aesop | エリック・カールのアイソップのおはなし | エリック・カール |
| 1981 | The Honeybee and the Robber | ミツバチとどろぼう | 著・画: エリック・カール |
| 1981 | Other Nonsense | — | 画: エリック・カール(Norton Juster 著) |
| 1982 | What’s for Lunch? | きみもおひるをたべなよ! | 著・画: エリック・カール |
| 1982 | Catch the Ball! | キャッチボール・どうぞ! | 著・画: エリック・カール |
| 1982 | Let’s Paint a Rainbow | にじをかこう | 著・画: エリック・カール |
| 1983 | Chip Has Many Brothers | — | 画: エリック・カール(Hans Baumann 著) |
| 1984 | The Very Busy Spider | くもさんおへやはきれいよ | 著・画: エリック・カール |
| 1985 | The Greedy Python | — | 画: エリック・カール(Richard Buckley 著) |
| 1985 | The Foolish Tortoise | — | 画: エリック・カール(Richard Buckley 著) |
| 1985 | The Mountain that Loved a Bird | — | 画: エリック・カール(Alice McLerran 著) |
| 1986 | Papa, Please Get the Moon for Me | パパ、お月さまとってきて! | 著・画: エリック・カール |
| 1986 | All Around Us | — | 著・画: エリック・カール |
| 1986 | All In A Day | まいにちがたのしい! | 画: エリック・カール他(安野光雅 編) |
| 1986 | My Very First Book of Animal Homes | — | 著・画: エリック・カール |
| 1986 | My Very First Book of Animal Sounds | — | 著・画: エリック・カール |
| 1986 | My Very First Book of Food | — | 著・画: エリック・カール |
| 1986 | My Very First Book of Growth | — | 著・画: エリック・カール |
| 1986 | My Very First Book of Heads | — | 著・画: エリック・カール |
| 1986 | My Very First Book of Motion | — | 著・画: エリック・カール |
| 1986 | My Very First Book of Tools | — | 著・画: エリック・カール |
| 1986 | My Very First Book of Touch | — | 著・画: エリック・カール |
| 1987 | A House for Hermit Crab | ぐるぐるぐるヤドカリ | 著・画: エリック・カール |
| 1988 | The Lamb and the Butterfly | ちょうちょとこひつじ | 画: エリック・カール(Arnold Sundgaard 著) |
| 1989 | Animals Animals | みんないきているさ | 画: エリック・カール(Laura Whipple 編) |
| 1990 | The Very Quiet Cricket | しずかなコオロギ | 著・画: エリック・カール |
| 1991 | Dragons, Dragons & Other Creatures That Never Were | — | 画: エリック・カール(Laura Whipple 編) |
| 1991 | Polar Bear, Polar Bear, What Do You Hear? | しろくまちゃんなにきこえる? | 画: エリック・カール(Bill Martin Jr. 著) |
| 1992 | Draw Me a Star | ほしをかいて! | 著・画: エリック・カール |
| 1992 | Today is Monday | きょうはなんようび | 著・画: エリック・カール |
| 1994 | My Apron | ぼくのエプロン | 著・画: エリック・カール |
| 1995 | The Very Lonely Firefly | さびしいほたる | 著・画: エリック・カール |
| 1996 | Little Cloud | ちいさなくも | 著・画: エリック・カール |
| 1997 | Flora and Tiger: 19 Very Short Stories from My Life | フローラとタイガー | 著・画: エリック・カール |
| 1997 | From Head to Toe | 手をあげてみよう | 著・画: エリック・カール |
| 1998 | Hello, Red Fox | もしもし、あかキツネさん | 著・画: エリック・カール |
| 1998 | You Can Make a Collage | — | 著: エリック・カール(技法解説書) |
| 1999 | The Very Clumsy Click Beetle | — | 著・画: エリック・カール |
| 2000 | Dream Snow | ゆめのゆき | 著・画: エリック・カール |
| 2000 | Does a Kangaroo Have a Mother, Too? | おかあさんはどこかな? | 著・画: エリック・カール |
| 2001 | To See My Friend? | こんにちわ!きみとあそびにいくよ! | 著・画: エリック・カール × 岩村和朗 |
| 2002 | “Slowly, Slowly, Slowly,” said the Sloth | ゆっくりゆっくりゆっくり | 著・画: エリック・カール(序文: Jane Goodall) |
| 2003 | Panda Bear, Panda Bear, What Do You See? | パンダくんパンダくんなにみてるの? | 画: エリック・カール(Bill Martin Jr. 著) |
| 2004 | Mister Seahorse | タツノオトシゴさん | 著・画: エリック・カール |
| 2005 | 10 Little Rubber Ducks | 10このちいさなゴムのあひるのこ | 著・画: エリック・カール |
| 2007 | Baby Bear, Baby Bear, What Do You See? | ベイビーベアベイビーベアなにみてるの? | 画: エリック・カール(Bill Martin Jr. 著) |
| 2007 | Artist to Artist: 23 Major Illustrators Talk to Children | — | Eric Carle Museum of Picture Book Art 編 |
| 2011 | The Artist Who Painted a Blue Horse | あおいうまをかいたがか | 著・画: エリック・カール |
| 2013 | Friends | ともだち | 著・画: エリック・カール |
| 2015 | The Nonsense Show | ありえない! | 著・画: エリック・カール |
展覧会情報
エリック・カール展 はじまりは、はらぺこあおむし
Eric Carle: Art, Books, and the Caterpillar
会期:2026年4月25日(土)〜7月26日(日)
開館時間:10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(ただし月曜が祝日の場合は開館、翌火曜休館)
会場:東京都現代美術館

このブログでは切手デザインや美術館情報などをご紹介しています。
SNSでは手のひらにのる小さなアート「1枚の切手」、街で見つけたアートなどを投稿しています。
フォローしてくださるとうれしいです!
facebook Postio Marche
Instagram mylittleart_studio
外国切手のウェブショップ ポスティオ・マルシェ https://www.postio.jp/

コメント